加齢による心の変化とは

人間は加齢に伴い、身体のあらゆる部分が変化します。例えば視覚では、視力が衰え視野も狭くなってきます。聴覚では高音域、中音域、低音域の順番で聴力が低下し、会話に支障が出てしまうのです。その他に嗅覚、味覚、触覚なども加齢によって変化が起きやすくなります。こうした身体の様々な変化と相まって、心に大きな影響を及ぼすことがあります。これまで当たり前だった感覚や知覚が徐々に衰えることで、自信がなくなったり苛立ちやすくなるのです。加齢による心の変化は、生活からも影響を受けます。例えば、生活範囲の縮小が挙げられます。定年退職による社会生活の引退、社会的役割や人間関係の喪失などによって、若い時代と比べて生活範囲がかなり狭まるのです。そうすると、だんだん意欲が落ち行動パターンも限られ、塞ぎ込みやすくなります。

また、健康的な不安も心の変化として表れます。高齢者は虚弱で疾病を抱えていると思われがちですが、高齢期は他の世代に比べて個人差が大きいため、一概にそうだとはいえません。しかし、健康不安が起こる原因の一つとして、生活習慣病に代表される慢性疾患を持つ割合が増えることが挙げられます。多くの高齢者は自覚症状があり、関節痛や不眠などが日常的に持続することで、大きな疾病がなくても不安は大きくなるのです。こうした加齢による心の変化は、なかなか受け入れられるものではありません。葛藤や不安が大きくなり、肯定的になれなくなるのです。介護の場面では、本人が受け入れられない分、介護者が理解して受け入れてあげることが大切です。他者から肯定されることで、前向きに生きられるようになります。